失業保険の基本概要
失業保険とは何か?
失業保険は、雇用保険に加入していた被保険者が失業した際に、生活の安定を図り、再就職活動を支援するための給付金です。64歳以上の方も条件を満たせば受給可能です。
64歳(65歳未満)の失業保険の特徴
64歳の失業保険は、通常の基本手当が適用され、支給日数は90日〜150日です。賃金日額に基づき、50〜80%の給付率で計算されます。65歳以上になると一時金での支給になるため、64歳で退職する方が有利です。また、老齢年金との同時受給は不可で、どちらかを選択する必要があります。
失業保険の受給条件
失業保険を受給するためには、雇用保険に一定期間以上加入していること、再就職の意思があり、求職活動を行っていること、失業の理由が正当であることが必要です。自己都合退職の場合、一定期間の給付制限があります。
64歳(65歳未満)の失業保険の受給方法
受給のための手続き
失業保険を受給するためには、ハローワークでの手続きが必要です。離職票や雇用保険被保険者証、本人確認書類を持参し、受給資格を確認してもらいます。
必要な書類とその準備
申請に必要な書類には、離職票、雇用保険被保険者証、本人確認書類、銀行口座の情報などがあります。これらの書類を事前に準備し、ハローワークに提出します。
手続きの流れと注意点
手続きの流れは、まずハローワークで受給資格の確認を行い、その後、定期的に求職活動の報告を行います。特に64歳の場合、受給資格や給付期間に制限があるため注意が必要です。
64歳(65歳未満)の失業保険の給付内容
給付金額の計算方法
1. 賃金日額の計算
賃金日額とは、退職前の6か月間の総賃金を、その期間の総日数(休日含む)で割った金額です。
- 賃金日額 = 退職前6か月間の総賃金 ÷ 180日
2. 基本手当日額の計算
基本手当日額は、賃金日額に対して**50%〜80%**の範囲で支給されます。所得が高い人ほど給付率は低く、所得が低い人ほど高くなります。
- 賃金日額が高い人:50%程度
- 賃金日額が低い人:80%程度
ただし、賃金日額に応じて上限額と下限額が設定されています。
3. 支給日数
支給日数は、退職理由や雇用保険の加入期間、年齢によって異なります。一般的には90日〜150日分が支給されますが、会社都合退職や長期勤務者は支給日数が多くなる場合があります。
給付期間と支給日数
1. 自己都合退職の場合
- 雇用保険加入期間が1年〜10年未満:90日
- 雇用保険加入期間が10年以上〜20年未満:120日
- 雇用保険加入期間が20年以上:150日
2. 会社都合退職(解雇・倒産など)の場合
- 雇用保険加入期間が1年未満:90日
- 雇用保険加入期間が1年以上〜5年未満:120日
- 雇用保険加入期間が5年以上〜10年未満:150日
- 雇用保険加入期間が10年以上〜20年未満:180日
- 雇用保険加入期間が20年以上:240日
3. 特定理由離職者や特定受給資格者の場合
会社都合退職に準じた日数が適用されます。
このように、64歳(65歳未満)の場合、退職理由や雇用保険の加入期間により、90日〜最大240日まで失業手当が支給される可能性があります。
支給停止の条件と再開方法
支給停止の条件
失業保険の支給が停止される主な理由は以下の通りです。
1. アルバイトや就労
- 週20時間以上の仕事に従事する場合、フルタイムと見なされ、失業保険は支給停止となります。
- アルバイト収入が一定額を超えると、その日の失業手当が支給されないこともあります。
2. 不正受給
- ハローワークに虚偽の申告を行った場合、不正受給として失業保険の支給が停止され、過去の給付金を返還する必要があるほか、ペナルティとして追加で支払うことがあります。
3. 求職活動をしていない
- 定期的な求職活動報告が行われていない場合、失業手当は支給停止となります。
4. 老齢年金の受給
- 失業保険と老齢年金は併給できないため、年金を受給中は失業保険が停止されます。
支給再開の方法
失業保険が停止された後、支給を再開するための手続きは以下の通りです。
1. 就労終了後の手続き
- アルバイトや短期の仕事が終了した場合、ハローワークに報告し、再び求職活動を行っていることを示すことで、支給が再開されます。
- ハローワークで「就労終了届」などの書類を提出し、失業状態に戻ったことを申告します。
2. 求職活動を再開
- ハローワークにて求職活動の状況を報告し、就労の意思を示すことで支給が再開されます。
- 指定された求職活動回数をクリアし、定期的に報告を行うことが重要です。
3. 年金受給の停止
- 年金を一時的に停止することで、失業保険の支給が再開できます。ただし、年金の停止手続きは別途行う必要があります。
64歳(65歳未満)の失業保険と老齢年金との併用
特別支給の老齢厚生年金と失業保険の関係
65歳未満で受け取れる年金の一つに特別支給の老齢厚生年金がありますが、この年金と失業保険(基本手当)は、併用できません。どちらかを選んで受給する形になります。
併用できない理由
失業保険(基本手当)は「働く意思がある人に支給される給付」であり、一方で年金は「定年後の生活を支えるもの」という性格があるため、両者の趣旨が異なることから、併用が認められていません。
併用する場合の対応方法
1. 失業保険を受給する場合
- 特別支給の老齢厚生年金は一時的に停止されます。失業保険の受給手続きをハローワークで行うと、年金は自動的に支給停止となります。
- 失業保険が終了した後、特別支給の老齢厚生年金の受給が再開されます。停止手続きや再開の手続きは自動で行われるため、特別な手続きは不要です。
2. 年金を優先する場合
- 年金の受給を継続し、失業保険の受給を見送る選択も可能です。この場合、特別支給の老齢厚生年金をそのまま受給し続けることができますが、失業保険は受け取れません。
どちらを選ぶべきか?
失業保険の方が支給額が多い場合が多いため、失業保険を優先する人が多いです。失業保険受給中は年金が停止され、終了後に再開されるため、一般的には失業保険を受給してから年金を受け取る方が経済的に有利な場合があります。
まとめ
65歳未満で老齢年金(特別支給の老齢厚生年金)を受給しながら失業保険を受けることは併用できません。失業保険を受給する場合、年金は自動的に停止され、失業保険終了後に再開されます。どちらを選ぶかは支給額や状況に応じて判断します。
64歳(65歳未満)の失業保険の特例
特定受給資格者の特例
65歳未満で退職する場合、特定受給資格者として扱われると、通常の自己都合退職より有利な条件で失業保険が受給できます。特定受給資格者には以下のようなケースがあります。
- 会社都合での解雇や倒産による離職。
- やむを得ない理由による退職(病気や家族の介護など)。 これにより、給付制限期間がなくなり、すぐに失業保険の支給が開始されます。
特定理由離職者の特例
特定理由離職者も、自己都合退職に比べて有利な条件で失業保険を受給できる特例があります。この特例が適用されるケースには次のようなものがあります。
- 離職の理由が、定年退職や、健康状態の悪化、家族の介護などでやむを得ない場合。
- 勤務条件の大幅な変更や長時間労働による退職など。 この場合、自己都合退職に比べて給付制限期間が短縮され、早期に失業保険を受給できます。
再就職手当の特例
64歳以上65歳未満の方も、通常の失業保険を受け取る期間中に再就職が決まった場合、再就職手当を受け取ることができます。再就職手当は、早期に再就職することで、残りの失業保険の一部を一時金として受け取れる制度です。この手当は、64歳以上でも適用され、経済的に有利です。
支給日数の特例
65歳未満の場合、自己都合退職でも90日〜150日の支給日数が確保されますが、特定受給資格者や特定理由離職者として認定される場合は、さらに支給日数が増えます。たとえば、会社都合退職や特定理由離職者として認定される場合、最大で240日の失業保険が支給される可能性があります。
年金との併用不可の特例
64歳以上で特別支給の老齢厚生年金を受給できる場合、失業保険との併用はできません。ただし、失業保険を優先して受給することができ、その間、年金は一時的に支給停止されます。失業保険の支給が終われば、年金が再開されます。
64歳11カ月で退職する人がいるのはなぜ?
64歳以上(65歳未満)の失業保険の注意点
1. 65歳を超えると一時金に切り替わる
- 64歳11カ月までに退職すれば、通常の失業保険(基本手当)が受給できますが、65歳になると高年齢求職者給付金という一時金に切り替わります。
- このため、64歳のうちに退職することが有利です。65歳以上での退職では、支給日数が短くなるうえ、再就職手当の支給もなくなります。
2. 自己都合退職の場合の給付制限
- 自己都合退職の場合、3カ月の給付制限期間があり、この間は失業保険を受給できません。求職活動は続けなければなりませんが、初回の給付まで待機が必要です。
- 会社都合退職や特定理由離職の場合、給付制限はなく、早期に支給が開始されます。
3. 老齢年金との併用は不可
- 64歳以上では、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合がありますが、失業保険と年金は同時に受給できません。
- 年金を受給する場合、失業保険は支給停止となり、失業保険を優先する場合は、年金の支給が一時的に停止されます。
4. 再就職手当の活用
- 再就職手当は、64歳以上でも適用されるため、早期に再就職が決まると、残りの失業保険日数に応じた手当を受け取ることができます。
- これにより、経済的なメリットが得られるため、積極的に再就職活動を行うことが推奨されます。
5. 求職活動の報告が必要
- 失業保険を受給するためには、定期的な求職活動の報告が必要です。求職活動を怠ると支給が停止される可能性があるため、ハローワークでの活動実績をしっかり報告する必要があります。
まとめ
64歳11カ月で退職すると、通常の失業保険(基本手当)を受給できるため、非常にお得です。まず、65歳未満であれば、失業保険は賃金日額に基づき、50〜80%の給付率で90日〜150日間支給されます。支給は毎月定期的に行われ、再就職が決まると再就職手当も受け取れる可能性があります。
一方、65歳を超えると「高年齢求職者給付金」という一時金に切り替わり、支給日数が30日〜50日と短くなり、定期的な支給もありません。また、再就職手当も適用されないため、64歳で退職する方が受け取れる金額や支援期間が長く、経済的に有利です。
そのため、64歳11カ月で退職すると、長期的な失業保険のメリットを最大限に享受でき、65歳で退職するよりも多くの給付を受けることができるため、よりお得な選択となります。
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